経営リスク管理とは？リスクの種類やマネジメントの方法を解説

企業の経営層は、経営リスクを正確に把握し、それぞれのリスクに応じた対応策を事前に講じることが求められます。一口に「経営リスク」といっても、その種類は多岐にわたり、適切な管理と対策が企業の持続的な成長に欠かせません。今回は、経営リスク管理の概要からリスクの種類、代表的なリスクの種類、それぞれのリスクに応じたマネジメント手法について解説します。

経営リスク管理とは？

経営リスク管理の概要について解説します。

◆経営リスク管理とは

経営リスク管理とは、経営リスクを管理することを指します。

・経営リスクとは？
経営リスクとは、経営を行っていくに当たって生じうるすべてのリスクを指します。業種や業界によって変わりますが、一般的に脅威といわれているのはサイバー攻撃などによる情報漏洩や、地震などの大きな自然災害などを通じた事業継続の危機などが挙げられます。また、企業が遵守すべき法規制への対応漏れや思わぬ違反行為のリスクもすべての企業が直面する経営リスクです。

・経営リスク管理とは？
経営リスク管理とは、経営リスクを回避したり、最小限にとどめたりするために、リスク管理を組織的に行っていく手法です。経営のみならず、企業が事業を行うに当たって生じるリスクを管理することをリスクマネジメントと呼びます。

リスクマネジメントでは、リスクの特定、分析、対応、評価の4つのプロセスにて行われるのが一般的です。

管理すべき経営リスクの種類

経営リスクには、さまざまな種類があるとお伝えしましたが、それらを具体的に見ていきましょう。主な経営リスクを6つご紹介します。

1経営戦略リスク

企業が立案した経営戦略を進める際に、付随するリスクです。例えば資金計画や新商品の開発などの戦略を立てたとしても、事業を進めるにつれて市場が大きく変化し、戦略通りに進められなかったり、失敗したりするリスクも出てきます。他に価格設定やM&A、海外市場への進出などに伴うリスクも関係します。

2コンプライアンスにまつわるリスク

社内における贈収賄や横領などの不祥事など、法に関わるリスクが挙げられます。他に知的財産権の侵害や情報漏えいなども含まれます。

3財務リスク

特に財務に関わるリスクです。例えば、経営不振や売上の低下などによって経営状態が悪化するリスクが挙げられます。

4労働災害リスク

労働災害リスクとは、従業員が業務を遂行する際に遭遇する可能性のある事故や健康被害のリスクを指します。労働災害は、従業員個人の安全や健康に重大な影響を与えるだけでなく、経営にも大きな影響をもたらすため、決して軽視できません。

5情報漏えいリスク

情報漏えいリスクとは、個人情報や企業の機密情報が不正にアクセスされたり、外部に流出したりすることで発生するリスクを指します。サイバー攻撃や内部不正、業務におけるミスなどが原因として挙げられます。

6自然災害・火災リスク

地震や津波などの自然災害や、火災、パンデミックなど、事業継続を脅かすリスクです。近年は自然災害の頻度が増していることから、事業復旧と継続のための日頃からの対策が欠かせません。

経営リスク別のリスクマネジメントの手法

経営リスクのリスクマネジメント手法の例として、よく実施されている取り組みをリスク別にご紹介します。

1経営戦略リスクへの対策例

・あらゆるリスクを考慮した経営戦略立案
経営戦略は、基本的にあらゆるリスクを想定して立案することが求められます。社会構造の変化や景気、技術革新、市場の変化などの戦略にまつわるリスクを洗い出し、事業目標やビジョンも合わせて検討します。

・BIツールでの分析
BIツールというビジネスの意思決定に関わる情報を一元管理して分析・可視化できるツールを用いて、データ分析によりリスクを予測します。例えば売上減や顧客離れといったリスクも、過去データから現在のデータまでを随時把握していることで、未然に対処できます。

【関連リンク】
BIツールとは？

2コンプライアンスにまつわるリスクへの対策例

・人為的ミスに対してダブルチェック・トリプルチェックの仕組み作り
コンプライアンスに関しては、何よりもまず各法律・法令に関わる理解と社内周知を実施します。その上で、業務の遂行時におけるリスクを回避するために、人為的なミスを徹底回避するための策として、ダブルチェックやトリプルチェックなどの体制を作ることが一つ考えられます。十分なチェック体制があれば、どこかでミスが検出される可能性があるためです。合わせて従業員教育は欠かせません。また、システムによるチェックを行うことも、対策の一つとして考えられます。

・弁護士や税理士によるアドバイス・チェック
随時、顧問弁護士や税理士などにアドバイスを受けたり、チェックをしてもらったりすることも考えられます。例えば、提供するサービスや製品に法的な部分が関わる場合は、社内だけで完結せず、弁護士にチェックを依頼するなど、第三者・専門的な目で見る仕組みを作っておくことが重要です。

2財務リスクへの対策例

・リスク分析による資本配分やリスク軽減戦略の設計
財務リスクについては、金利変動や為替、株式などの財務にまつわるリスク分析を行い、資産配分やリスクを軽減した経営戦略を行います。一般的に、統計データやシミュレーションを通じて行われています。
また、資金調達の経路を整えておくことや、予算管理を徹底して行うことなども基本として重要といわれています。

4労働災害リスクへの対策例

・現場マニュアルの策定遵守
労働災害は従業員の日々の心がけによって予防・回避することが可能です。そのために必要なことの一つとして、業務をスムーズかつ安全に実行できる現場マニュアルを策定し、遵守させることが重要です。

・労働安全衛生教育への注力
労働安全衛生法では、事業者は従業員に対して、所定の労働安全衛生教育を行うことが義務付けられています。ただ実施するだけでなく、従業員自ら率先して安全管理を行うようになるほどの効果的な教育を行うことが大切です。

5情報漏えいリスクへの対策例

・情報セキュリティポリシー策定
情報漏えいのリスクについては、まず社内で統一した情報セキュリティポリシーとして指針を設け、それに基づいて行動することが求められます。例えば個人情報の取り扱い方法を法律に基づいて細かく定めておくなどすれば、従業員は取り扱い時にどのように対応すべきかが明確になります。
その上で、情報セキュリティの強化のためのシステムやツールの導入などの仕組みづくりを行います。

・情報セキュリティ教育
従業員に対する情報セキュリティ教育も重要です。例えば、マルウェアを含む悪意のあるメールが送り付けられる可能性もあるため、開封は絶対にしない、ファイル送信時には暗号化して行うことを徹底する、情報漏えいによってもたらされる会社や従業員個人への損害などを周知するなどの内容が求められます。

6自然災害・火災リスクへの対策例

・別地域の拠点を設けるなどのリスク分散
例えば大地震などに備えて、事業場が一ヶ所、稼働できなくなった場合に、別の拠点で事業継続できる仕組みを整えておきます。このようなリスク分散を事前に行っておくことで、早期復旧および事業継続が進めやすくなります。

・初動対応・復旧手順の策定
大地震などの災害が起きたときの初動対応や復旧までの手順を明確に取り決め、文書化しておくことが重要です。手順書を策定した後は、平時のうちにテストしておくことも欠かせません。テスト訓練を行いながら有効性を判断し、課題を見つけて見直しを図ります。

経営リスク管理を進める手順

経営リスク管理は、一般的には次のような手順で進めていきます。

1.リスクの洗い出し・発見
自社の経営リスクをあらゆる角度から洗い出し、特定します。この段階では無理にしぼりこまずに、できるだけ数多く見つけることに専念します。

2.リスクの分析・評価
集めたリスクは、すべて分析を行い、リスクの度合いを評価していきます。

3.リスク対応の優先順位を決める
評価によってリスク対応を行う優先順位を決めます。

4.各リスクの対応策の決定
優先度の高いものから順に、リスク回避・最小限にする対策を決定していきます。

5.実行
優先度の高いリスクから全社的に取り組みを実行していきます。

まとめ

経営リスクは、企業活動を進める上で必然的に直面する課題であり、すべての企業が避けて通ることはできません。しかし、そのリスクにどのように対応し、管理するかによって、企業が安全かつ持続的に成長できるかどうかが左右されます。

そのため、優れた経営戦略や事業戦略を策定するだけでなく、経営リスクを正確に分析し、リスクに備えた具体的な対応策を事前に講じることが極めて重要です。
本文でもご紹介したBIツールは、このような経営リスク分析に役立ちます。

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