データ駆動型経営とは?実践方法や成功事例を解説
さまざまなデータを活用して、経営の意識決定に役立てるデータ駆動型経営は、迅速かつ正確な戦略の意思決定が求められる現代において重要な経営手法となっています。
今回はデータ駆動型経営の概要から効果、実践方法、成功事例までをご紹介します。
データ駆動型経営とは?
データ駆動型経営の定義とメリットを確認しておきましょう。
●データ駆動型経営とは
データ駆動型経営とは、勘や経験に頼らず、収集した膨大なデータの分析を行い、その分析結果を経営の意思決定に役立てる経営手法です。一般的は「データドリブン経営」とも呼ばれることもあります。
なぜデータを活用して経営の意思決定を行う必要があるのでしょうか。その背景の一つとして、市場における消費者行動やニーズの多様化、複雑化が挙げられます。
消費者は以前と比較し、スマートフォンなどを通じて、インターネット上の豊富な情報を手に入れられるようになっています。このことから、行動やニーズが多様化しており、また複雑になっていることから、個々の消費者に対する最適なサービス提供が求められるようになってきています。
一方的な価値を押し付けるだけのサービスでは、個々の消費者に響かなくなってきているのです。データを活用して、消費者の行動やニーズを分析し、個々に適したサービスによって消費者のニーズを満たす必要が出てきています。
また近年のビジネス環境は急速に変化を続けており、従来のような勘や経験だけでは市場の状況を正確に読むことがむずかしくなってきています。客観的なデータ分析結果を頼りに経営判断を進めていくことが必要不可欠となっているのです。
●データ駆動型経営のメリット
データ駆動型経営を進めることで、企業は次のようなメリットが得られます。
・客観的な根拠のある高精度な意思決定
従来の勘や経験に頼る意思決定は主観的であり、多くの取りこぼしや判断ミスがつきものです。データ駆動型経営では、データという客観的根拠に基づく意思決定であることから、信頼性の高い判断が可能になります。
・課題が可視化される
日々蓄積されていくデータは、自社の業務の現状を知る大きな手がかりとなります。そこには数多くの課題が潜んでいるでしょう。より多くのデータを取得できるようになった現代においては、より細かな課題が可視化されやすくなります。
・顧客理解が進む
顧客に関するデータについては、顧客行動の傾向やニーズの理解や把握が可能になります。これまで見えなかった傾向が、データ分析によって手に入れられる可能性があります。
データ駆動型経営の効果
データ駆動型経営を導入することで得られるメリットは複数ありますが、それらによってどのような効果を得られるのかをご紹介します。
●ビジネス環境の変化に強い柔軟な組織になる
近年のビジネス環境は、急速な変化を遂げているとお伝えしましたが、データを持ってすればその変化に対応しやすくなります。勘や経験に頼っていた頃は、過去のやり方を踏襲していましたが、すべての状況に適切に対応できるとは限りません。
目に見えないところで起きている変化に対応するためには、正確な現状把握が欠かせません。リアルタイムで集めた消費者動向などのデータをもとに検討を進めれば、その都度、状況に応じた有効な戦略を検討することができます。変化に強い組織作りにつながるでしょう。
●PDCAを回しやすい
データによって可視化される課題が増えれば、解決できる課題も増えます。その結果、「Plan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)」のPDCAサイクルのプロセスがスピードアップすると考えられます。サービスが短期間で改善すれば、生産性向上や売り上げ増強が期待できます。
●顧客ニーズに合ったサービスを提供できる
顧客データ分析結果によって、顧客への理解が進めば、より顧客ニーズを満たすサービス内容の拡充や新規サービスの立案に役立てられます。その結果、多くの顧客を惹きつけ、顧客満足度の向上にも寄与するでしょう。
●デジタル化による作業効率化、リモートワークの促進、作業コスト低減
社内における業務やコストへの良い影響にもつながります。データ駆動型経営の組織ではデータを活用する文化が浸透し、デジタル技術の活用も進んでいきます。そのため作業の無駄がなくなり、自動化も進むことで、作業効率化につながります。デジタルを中心にした体制が作られることで、リモートワークが促進されたり、作業コストの削減につながったりするでしょう。
データ駆動型経営の実践方法
データ駆動型経営の実践方法を見ていきましょう。
●データ駆動型経営に必要な3つのポイント
まず押さえておきたいのが、データ駆動型経営に必要な次の3つのポイントです。
・データ活用基盤の構築とデジタルツールの導入
データ駆動型経営に必要不可欠なデータを蓄積、管理するためには、データ活用基盤の構築と、分析ツールの導入が必要になります。
・人材の確保と育成
データ分析を行うためには、専門的な知識を有する人材を確保し、育成していく必要があります。近年は、専門家でなくとも分析ができるツールも出てきているため、それを活用する場合は、データ分析そのものではなく、どのようなデータを分析すれば良いのか、また分析結果をどのように活用するのかといった知見を提供する人材が求められるでしょう。
・組織変革
データ駆動型経営を実現するためには、社内のデータを蓄積して活用する組織体制を作る必要があります。いくらデータを活用できるような環境が整っても、実際に活用がされなければ意味がありません。まずはデータの重要性を熟知しており、活用する文化を醸成することが重要であり、そのための組織改革を進める必要があります。
データ駆動型経営のデータ活用の実施の流れ
データ活用によって経営の意思決定に役立てるまでの流れをご紹介します。
1.データの収集、蓄積
必要なデータを洗い出し、社内に散在しているデータを集める仕組みづくりを行います。データを一元管理し、分析するための仕組みを整えます。
必要に応じて社外のデータも活用できるようにします。
2.データ加工・可視化
集めてきたデータは、そのままでは分析や活用ができません。データを加工し、必要に応じて可視化して、人間にとってわかりやすくする必要があります。
3.データ分析
データ分析を行います。必要に応じて複数のデータを掛け合わせて、分析結果を出します。分析は、あらかじめ目的の明確化が求められます。例えば、ある商品の売れ行きが良くないという課題があったとすれば、市場動向や社内の顧客データ等の分析が求められます。
4.分析結果に基づく意思決定、活用
各種データ分析結果を元に、意思決定を行い、戦略立案等の活用に役立てます。
データ駆動型経営の成功事例
データ駆動型経営は、すでに多くの企業が取り入れ、成功させています。3つの事例を見ていきましょう。
●銀行
ある銀行は、地域の金融機関を取り巻く環境変化が大きい中、既存ビジネスを見直し、新たなビジネスを探求するための中期経営計画として、データ駆動型経営に変革する旨を掲げました。
専門の推進室を設置するなどして、データの分析と活用体制を構築し、よりデータドリブン経営組織にするために高度デジタル人材の育成にも取り組んでいます。データを活用することで、変化の激しい顧客のニーズに応えるサービス提供を目指しています。
●大手百貨店
ある大手百貨店運営企業は、顧客に基づく独自のデータ駆動型経営方針を掲げています。店舗などにおける顧客との接点を通じて得られた顧客情報、サービス利用状況などのデータを分析することで、顧客の理解を促進し、より良いサービスの提供を目指す仕組みを作っています。
同社は複数の店舗を経営していますが、それぞれの店舗の計画、顧客データを収集して集約した上で分析することで、単独の店舗の情報では得られなかった新たな分析結果を取得しています。その新たな分析結果を用いて、新たなサービスの立案に役立てています。
●旅行会社
ある旅行会社は、データ駆動型経営を進めるための戦略および組織を社内に作り、データをもとにした施策の実行を本格的に行っています。データから顧客の旅行目的や購買の動機を把握することで、それをもとに施策を実施する仕組みを構築しています。
顧客ニーズを的確に把握できるようになったことで、最適な宿泊プランの提案につなげることができ、成約率を高めることに成功しています。
まとめ
データ駆動型経営は、既に多くの企業が導入している手法であり、より深化させるための組織変革を進めています。ただデータ分析を行えば良いのではなく、誰もがデータ活用を当たり前のように行える組織づくりを目指すことが大切といわれています。
そのために必要なデータ活用基盤やデータ分析ツールの浸透は、重要な取り組みの一つです。
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